◎2010年10月7日(木)〜9日(土) 日本鉄道保存協会2010年度総会を北海道で開催 ー鉄道遺産のゴールデントライアングル丸瀬布・陸別町・上士幌を訪ねてー 歴史的鉄道車両や施設、構造物等の保存・活用を推進するNPO等の市民団体、地方自治体、JR各社、民営鉄道、第3セクターが加盟する日本鉄道保存協会の総会・見学会が10月7日〜9日まで北海道で開催され、全国から会員をはじめ関心を寄せる皆さんが約50名参加した。 10月7日(木)丸瀬布会場 丸瀬布(遠軽町)は絶好の秋晴れに恵まれ、総会に先だって「いこいの森」で20年以上も動態保存されている国産の森林鉄道用蒸気機関車「雨宮21号」や鶴居村専用軌道で活躍していたディーゼル機関車の牽引する客車列車や混合列車に乗車したり、快走する雄姿をカメラに収めたり楽しいひと時を過ごした。 雨宮21号はかつて丸瀬布町に敷設されていた営林署で活躍していた森林鉄道用の蒸気機関車で、東京の雨宮製作所で昭和3年(1928)に製作された。一度は廃車の運命にあったが、丸瀬布住民の皆さんの熱意で保存され復活した全国でも稀な存在である。かつて国鉄石北本線構内から山奥深く敷設されていた森林鉄道は廃線となっているが、この区間の一部のレールや犬釘等を再利用して現在、「丸瀬布いこいの森」内に新たに園内を周回する約2kmの線路を敷設、動態保存を行っている。近年、西武山口線で使用されていた木造客車が西武鉄道から寄贈された後に復元され雨宮21号に牽引されて活躍中だ。この客車はかつて井笠鉄道(岡山県)に所属していたが同鉄道の廃線後、西武鉄道が取得動態保存していた経緯がある。 森林鉄道の魅力を満喫した後、町自慢の温泉施設である「マウレ山荘」で総会が開催された。代表幹事団体の財団法人交通協力会 菅 建彦理事長が挨拶、遠軽町長 佐々木修一氏から歓迎のあいさつがあった。さらに、開催地の取り組みとして「雨宮21号」の動態保存への苦難のみちのりが報告された後、全国から4団体の活動報告があった。気動車の体験運転を推進して好評の「りくべつ鉄道」(北海道)、社内の鉄道遺産の調査・保存を戦略的に行う「JR西日本」(大阪府)、動態保存を介して地域活性化を楽しく行う「片上鉄道保存会」(岡山県)、かつての森林鉄道の橋梁、隧道等が重要文化財に指定された「馬路村やなせ森林鉄道運営委員会」(高知県)で、会場内から大きな拍手を浴びた。一方、「北海道の近代化遺産の保存と活用」と題して今 尚之さん(北海道教育大学准教授)が講演をおこなった。なお、2011年度の総会は、新たに開館する「JR東海・リニア鉄道館」での開催することが決まった。 長丁場の総会の後、恒例の交流会で大いに盛り上がった。 10月8日(金)陸別会場 2日目は、「りくべつ鉄道」のある陸別町に会場を移した。かつての「ふるさと銀河線」の陸別駅構内に到着した参加者を迎えてくれたのは、銀河線で活躍していた気動車と地元の皆さんの笑顔であった。廃線から3年、鉄道は不滅として地元のみなさんが行政と力を合わせて気動車の動態保存を開始したのである。しかも、乗車するだけだはなく実際に運転台に座って運転体験が出来ることが特徴だ。体験運転のキップを幸運にもくじ引きでゲットした会員が早速挑戦。400mの構内を行ったり来たり。なかなかの腕前である。鉄道への永遠の想いと地域活性化の切り札としての戦略は見事に的中。町に元気が蘇り、遠方から訪れるみなさんとの交流の場としても陸別駅構内は賑わっている。 昨年はかつての国鉄池北線(旧網走本線)時代に活躍したターンテーブルを修復整備している。今後は、体験乗車・運転の距離を大幅に延長して10km先の川上駅を目指すと言う。鉄道復活にかける夢は半端ではない。 見学のあとは金沢紘一町長の歓迎挨拶のあと北海道内8団体の活動報告が行われた。丸瀬布や陸別の他、幌内鉄道関連資料や道内を走った旧国鉄の名車を保存展示する三笠鉄道村(三笠市)、老舗の市民団体で歴史的客車やラッセル車などを保存管理する三菱大夕張鉄道保存会(夕張市)、現役の石炭採掘に伴う運搬列車を大切にしている「釧路臨港鉄道友の会」(釧路市)、国鉄旧士幌線のコンクリートアーチ橋群を国登録有形文化財として保存して地域活性化に活用している「NPOがし大雪アーチ橋友の会」(上士幌町)、北海道の鉄道の原点小樽市手宮にある総合博物館の歴史的鉄道車両の保存整備を行う「NPO北海道鉄道文化保存会」(小樽市)、旧根室本線狩勝で20系ブルートレインなどの歴史的車両の保存を進める「NPO旧狩勝線を楽しむ会」(新得町)、釧網本線でイベント列車の運転など鉄道に親しむ場づくりをおこなう「MOTレールクラブ」(網走市)の代表者が次々に登壇、会場を沸かせた。これを受けて、佐々木敏治氏(陸別町総務課)から北海道の活動団体の緩やかなネットワークを設立する提案が出され賛同され会場は拍手で包まれた。 10月9日(土)旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋群の見学 最終日は「NPOひがし大雪アーチ橋友の会」事務局長角田和久さんらのご案内によりクマやエゾ鹿が多く生息する大自然の中に息づくアーチ橋を見学した。上士幌町長竹中貢さんの歓迎あいさつ後、貸切りバスで出発。糠平川に沿って残る廃線跡を訪ねた。駅ホームの痕跡、軌道敷きそしてお目当てのコンクリート橋など旧士幌線の鉄道遺産の魅力を角田さんらの闊達なご説明の魅力に触れることができた。特に現在修復のために募金活動を行っている第3音更橋梁は風光明媚な泉翠峡を跨いでおり、ダイナミックな4連アーチをすぐ横の国道橋から眺めることが出来て好評であった。糠平温泉近くの糠平川橋梁までは紅葉の廃線跡をゆっくり歩いた。カーブした橋梁の上からは渓谷や糠平湖の景観を楽しんだ。橋の下に降りると大きなアーチ橋の構造を目の当たりして興奮。その後、旧糠平駅舎跡に建設された鉄道資料館の見学やNPOの皆さんがボランティア活動で再現した線路の上を手作りのトロッコにのって乗車体験をおこなった。 鉄道遺産を保存・活用する3団体の事例を3日間にわたり実感して2010年度鉄道保存協会の総会・見学会は無事終了した。あらためて3つの町の関係の多くの皆さまにお礼申しあげます。 |
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