3.調査事業
全国各地の自然歴史的環境の保全や遺産の保存活用を目的に調査対象を選定し、調査を実施した。31年間にコーディネーターや委員として推進した調査対象は、1971年の「石城山(山口県)」から2005年度「栃木の歴史的街並み」まで69ヶ所に及ぶ。
調査委員会の設置、委員の選出、調査計画や内容の検討、調査報告会の実施など、市民、行政、専門家、団体等、調査の成果をもとにヘリテイジセンターの建設、修復プログラムあるいは、条例の制定、保存地区への指導などさまざまな展開へ導くのである。立案と実施、また総合的調査も合わせて実施し、ネットワーク設立への成果を生んでいる。以下対象を示す。
◎1976年度
・石城山(山口県)神籠石の現状と保全対策。小野忠煕(山口大学教授)他
◎1978年度
・猿島の自然(神奈川県)動植物等の現状と環境の保全。林 公義(横須賀市博物館)他
◎1981年度
・佐倉の武家屋敷(千葉県)緑に囲まれた武家屋敷の現状と再生。大河直躬(千葉大学教授)玉井哲雄(千葉大助教)他
◎1982年度
・佐原の町並(千葉県)小野川沿いと香取街道の町家の保存。大河直躬(千葉大学教授)福川裕一(千葉大学助教授)他
◎1983年度
・黒江の町並みと町家(和歌山県)紀州漆器生産地の町家の再生。白木小三郎(大阪市大教授)他
◎1984年度
・琴引浜の鳴き砂(京都府)鳴き砂の現状と浜の自然環境の現状。三輪茂雄(同志社大教授)
◎
・三角西港の石積埠頭(熊本県)西洋式歴史的地区築港の再生。堀内行雄(熊本大学教授)他
◎1985年度
・さば街道熊川宿の町並み(福井県)歴史的町並みの保存と環境教育。西村幸夫(明治大学助手)
・平野の町並み(大阪府)寺内町の町並み活性化。林野全孝(大阪府立大学教授)他
◎1986年度
・飛騨古川の町並み町づくり(岐阜県)歴史的町並みと町屋の現況と保存対策。西村幸夫(明治大学助手)
・草野の町並み(福岡県)宿場町に残る町屋の現況。岡 直道(九州芸工大助教授)
・水俣の歴史・文化環境と薩摩街道(熊本県)町に残る歴史的遺産の保存活用。高田 昇 他
◎1987年度
・江井のまちなみと廻船問屋住田家(兵庫県)地域の核としての歴史的遺産の活用。西山卯三(京都大学名誉教授)他
・撞木造りの町並みと米沢街道(新潟県)歴史的町並みの現況と保存対策。稲垣栄三(東京大学教授)他
◎1988年度
・迫間湿地の保全と利活用(栃木県)優れた自然環境の保存と活用。進士五十八(東京農業大学教授)他
・須坂の歴史的町並み(長野県)大壁造りの町家の保存と再生。大河直躬(千葉大学教授)他
・伝えよう大湫宿の自然と町並み(岐阜県)町づくりの視点からの宿場の再生。福川裕一(千葉大学教授)他
・陣屋町足守のまちなみ(岡山県)歴史的建造物の保全再生計画の提言。西山卯三(京都大学名誉教授)他
◎1989年度
・「総社・元総社」歴史の散歩道計画(群馬県)古墳や歴史、自然遺産の活用。進士五十八(東京農業大学教授)他
・白川村の合掌造民家(岐阜県)利賀野地区の合掌造り民家の現況と再生。安藤邦廣(筑波大学教授)他
・吉田村の町並み(島根県)たたら製鉄関連遺産の活用。杉本俊多(広島大学助教授)他
・緑川流域石橋群(熊本県)石橋群と自然環境の保全。片寄俊秀(長崎造船科学大学教授)他
◎1990年度
・厚沢部町・観光からのまちづくり(北海道)自然、歴史環境と観光資源の保護。高橋 進(東京農業大学教授)他
・天領出雲崎の町並みと歴史的遺産(新潟県)切妻型の町家の保存対策の提言。稲垣栄三(東京大学名誉教授)他
・斐川平野の築地松と散居集落(島根県)景観条例の制定を提言。伊藤庸一(日本工業大学教授)他
・清色城と入来麓武家屋敷群(鹿児島県)現況と伝統的建造物群の保存。土田充義(鹿児島大学教授)他
・信州須坂の町並み(牟礼、村山地区)(長野県)歴史的建造物の現況。大河直躬(千葉大学教授)他
◎1991年度
・東広島市の町並み(広島県)酒蔵群の保存と活用。水谷頴介(神戸大学教授)他
・阿波貞光(徳島県)二重うだつの町家の保存と活用。西山卯三(京都大学名誉教授)他
・甦る日向国都於郡城(宮崎県)
◎1992年度
・風穴と小諸宿の町並み(長野県)地域の歴史的環境の保全。大河直躬(千葉大学教授)他
・三井の茅葺き民家(石川県)里山に残る茅葺き民家の現況。安藤邦廣(筑波大学教授)他
◎1993年度
・美杉村・多気の歴史的遺産調査(三重県)水畠家関連遺跡の保全。三村浩史(京都大学名誉教授)他
・美山の茅葺き民家の保存と再生(京都府)伝統的建造物群保全地区への検討。日向 進(京都工芸大学教授)他
・村田の歴史的町並み(宮城県)紅花で栄えた町の再生計画。藤島亥治郎(京都大学名誉教授)他
◎1994年度
・米沢の旧武家屋敷群(山形県)市街地に残る茅葺きの武家屋敷の現況。伊藤庸一(日本工業大学教授)他
・網野銚子山古墳(京都府)西日本最大の古墳の活用。西山徳明(九州芸工大学教授)他
・黒島の自然とキリシタン(長崎県)レンガ造り教会の歴史的価値。土田充義(鹿児島大学教授)他
◎1995年度
・美利河・花石の砂金採掘跡(北海道)産業遺跡としての歴史的価値。
・ワークショップによる博物館都市長浜と大通寺(滋賀県)都市博物館構想。三村浩史(京都大学名誉教授)
・奄美大島笠利町の民家調査報告書(鹿児島県)ひきもん造り民家の現況。宮澤智士(長岡造形大学教授)他
◎1996年度
・白馬桃源郷青鬼の集落(長野県)重要伝統的建造物群保存地区への提言。宮澤智士(長岡造形大学教授)他
・舞鶴の赤煉瓦建造物群(京都府)レンガ建造物の町づくりへの活用。日向 進(京都工芸繊維大学教授)他
・油津の町並みと堀川運河(宮崎県)歴史的港湾に残る資源の再生計画。土田充義(鹿児島大学教授)揚村 堅(鹿児島県立女子短期大学助教授)
◎1997年度
・眺山丘陵と下小松古墳群(山形県)古墳の再生とまちづくり。大塚初重(明治大学名誉教授)他
・伊勢街道市場庄の町並(三重県)歴史的町並みの現況と保存対策。浅野 聡(三重大学助教授)他
・中山道柏原宿まちなみ調査(滋賀県)宿場の再生と町づくり。三村浩史(京都大学名誉教授)他
◎1998年度
・泉州・熊取・旧中林綿布工場保存活用調査(大阪府)近代化遺産の再生を提言。三村浩史(京都大学名誉教授)他
・豪雪地渋海川流域の民家とその環境(新潟県)歴史的環境を活かした地域づくり。宮澤智士(長岡造形大学教授)他
・越前大野の城下町と町家(福井県)町並み保存地区に向けた計画作成。斉藤栄俊(東京芸術大学教授)吉田純一(福井工業大学教授)他
◎1999年度
・城下町彦根の町並み(滋賀県)市街地に残る足軽屋敷の保存と再生。西川幸治(滋賀県立大学長)他
・二丈町・姉子の浜の鳴き砂保存活用調査報告書(福岡県)鳴き砂を町づくりに活かす。西山徳明(九州大学教授)他
・城下町・大村と武家屋敷通り(長崎県)緑に囲まれた優れた住環境としての武家屋敷の保存。林 一馬(長崎総合大学教授)他
・日野商人と桟敷窓の町並み保存とその活用(滋賀県)伝統文化を活かした町づくり増井正也(奈良女子大学教授)他
・豪雪地渋海川流域の景観とその環境(新潟県)宮澤智士(長岡造形大学)
◎2000年度
・渡名喜島伝統集落周辺域における自然的歴史景観の保存活用調査(沖縄県)ネイチャートレイル計画の推進。宮脇 昭(横浜国立大学名誉教授)
・ふるさとの原風景 浮野の里(埼玉県)市民参加による保存活用計画の作成。井手久登(東京大学名誉教授)麻生 恵(東京農業大学教授)
◎2001年度
・黒石のこみせのまちなみ(青森県)伝統的建造物群保存地区に向けて。福川裕一(千葉大学教授)他
・島原ーキリシタン弾圧の痕跡を残す町家と町なみ(長崎県)歴史的環境の保全計画の立案。宮澤智士(長岡造形大学教授)林 一馬(長崎造形大学教授)他
・旧吉田宿の町並み調査(埼玉県)歴史的町並みの保存計画。山中智則(コンサルタント)他
◎2002年度
・村上の町家と町並み景観(新潟県)町家の再生と町づくり計画。西村幸夫(東京大学教授)吉田桂二(建築家)
・平戸の町並み(長崎県)オランダ商館復元とあわせた町の活性化をめざして。西 和夫(神奈川大学教授)他
◎2003年度
・飯高寺を中心とした巨木を育む里山(千葉県)里山の環境保全計画。福川裕一(千葉大学教授)他
・ホフマン窯と赤レンガ(滋賀県)ホフマン窯の保存対策と活用。石田純一(京都工芸繊維大学)他
◎2004年度
・上条集落の切妻民家群(山梨県)養蚕農家保存対策と活用。大河直躬(千葉大学名誉教授)他
・厳島神社門前町 安芸の宮島町並み調査(広島県)世界遺産地区への登録をめざして。宮本雅明(九州大学教授)宇高雄志(広島大学講師)他
◎2005年度
・栃木の歴史的町並み(栃木県)伝統的建造物群の保存計画。河東義之(千葉工業大学教授)他
・波照間島の自然文化遺産(沖縄県)自然歴史環境を活かした地域づくり。三村浩史(京都大学名誉教授)
総合調査(主なもの)
鉄道文化財全国調査
鉄道車両、施設、構造物を文化財の視点から見直し、現況を把握。青木栄一(東京学芸大学教授)小池 滋(東京都立大学教授)
全国鳴き砂現況調査
自然環境のバロメーターとしての鳴き砂の現況把握と保存対策。三輪茂雄(同志社大学教授)他
歴史的宿泊施設の観光活用を通した地域活性化推進調査
三村浩史(京都大学名誉教授)後藤 治(工学院大学助教授)
すぐれた自然環境としての葦原、茅場の保全調査
地域の生活文化にねざした循環型環境保全の提案。安藤邦廣(筑波大学教授)小林 豊(日本野鳥の会)他